【アイドル超初心者が】自粛期間に出会った「アイドル」、King&Prince【魅力分析ノート】
私の住む北海道では、コロナ禍による緊張感のある生活が2月末から続いている。当然、家にいる機会が増えた。そんなある日、ぼやっとして何気なく見た朝のテレビ。眠たい目をパチッとさせてくれ、なんだか一日頑張ろうと思わせてくれる瞬間があった。『ZIP!』の「MEDAL RUSH」というコーナーだ。「King&Prince」は確実にプラスのパワーを持ったグループだと思った。
何をいまさらという話だろう。友人にきけば、「とうに人気のあるグループだよ!!!チョピまるは相変わらずアイドルに疎すぎ!」とちょっと怒られた。たしかに調べたらすごかった。というか、みたことあったじゃん。普段、どんだけぼーっとしてるのよ。私がまともに知っていて過去に興味を持ったアイドルといえば、男女を合わせても、SMAP、モーニング娘。、嵐、AKB48という感じで、高校を卒業して以来、何年も友人の話を聞いているだけだったな(代わりになぜか昭和のアイドルへの知識はあるという謎)。
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前置きが長くなったが、そんな本当に“アイドル知らず”の初心者でも、「やっぱりアイドルってエネルギーがあってすごいな」と感じさせてくれたKing&Princeについて、ここ数か月みてきて感じてきたことを、恐れ多くもその魅力について分析をしていこうというのが今回の記事である。いつもの魅力分析記事に比べてライトになってしまうため、「魅力分析ノート」という形となるので、その点ご了承いただきたい。(いつの日か、本格的魅力分析にしたい!と思っているところである)。
【以下、にわか注意でございます!!!】
「令和」とKing&Prince
「MEDAL RUSH」を意識して見始めたのは、「新体操」だったのだが、あえてなにも調べずに見たところ、あんまり上下関係がわからなかった。最年少の高橋海人くん(以下、敬称略)と最年長の岸優太くん(以下、敬称略)はボールの交換でいざこざを起こしていたし、最年長のほうが(大人げなくも)「(高橋とはペアに)いちばんなりたくない」といっていた。
「関係性の妙」はそれだけではない。互いに甘やかすわけでもなく(高橋は永瀬廉くん(以下、敬称略)がフープをできないことをいち早く指摘していた)かといってピリピリしているわけでもない(「おぉん、できねぇよ」といいつつ笑う永瀬のキレ芸はテンポが良かった)。ときにヤジを飛ばしあいながらも、最後の演技のように決めるときはきっちり団結して決める。そんなグループの雰囲気が「令和」的ではないだろうか。
ふわふわとした雰囲気を漂わせながらも、互いが仲間でライバル。そこには、単純な体育会系の上下関係もなければ、文化系のやたらと平等にこだわる関係でもない。また、バチバチのライバル関係でもなければ、なれ合いもない。平成後期には(令和に入っても)、さまざまなハラスメント特に「パワーハラスメント」が社会問題になってきている*1。パワハラをされることも問題であるし、パワハラとされるのも怖れて正しい指導・仕事ができないことも大きな問題だ。だからこそ、「King&Prince的な関係性の妙」は、「令和」が模索する“仕事”の上での人間関係の理想になりうるひとつの形を提示しているのかもしれない。令和―King&Princeの親和性。
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そのカギを握っているのは、リーダーの岸優太と俳優活動などメディアへの露出が一番高い平野紫耀くん(以下、敬称略。「MEDAL RUSH」では運動神経抜群のところを見せていた)だ。そのふたりを特に見ていこう。
まず、最年長で、リーダーの岸。King&Princeに注目し始めてから、「ああ!あのときのあの人!!」とバラエティでの記憶が一番浮かんだメンバーでもある。主に「でんじろうのTHE実験」の印象が強かった。岸は、いつも謙虚で芸人の中にまざっていても遜色ないほど、体を張っていたイメージがある。オードリーの春日に見守られながら、どの味覚が一番強いか検証していたのはなぜかすごく思い出される(春日さんじゃないんだ!?という驚きがあった)。
リアクションや発言の天然さによってか、“アイドル枠で出てるんだなぁ”という印象も薄く、安心して笑える。いつも一生懸命で元気な人だなぁというイメージがあり、King&Princeだということを知って驚いた。たぶん、まったくアイドルやジャニーズを鼻にかけている感じがなくて、周りの出演者も変に気をつかっていなかったからだろう。そのあと、「Mazy Night」のMVをみたときの眼力と歌唱とのギャップに驚くばかりだった。
共演者にも視聴者にも気を遣わせず、でも笑わせる感じは、「ぺこぱ」のような最新の肯定的「笑い」をつかんでいる(少なくとも似ている)。やっぱり、令和―キンプリは近い存在なのだろう。岸の以上のような「人柄」はこのグループ全体の関係性とそのイメージ大きなイメージを与えている。独特の天然さが呼ぶ年下からのツッコミを呼び「関係性の妙」の大枠を作っていて、さらに近寄りがたいほどの見た目を持ちながらも「親近感」と愛嬌があるグループ全体のイメージに寄与している。
一方、平野。真顔でいると、顔立ちがキリっとしているので、なんとなく「冷たい」印象をも持たせるが、実際には天然らしく(ネットで調べただけでその天然エピソード数えきれないほど紹介されていた)、また笑顔になった時とのギャップが女性の心を掴みそうだなというイメージだった。そのギャップは、現在放映中の『未満警察 ミッドナイトランナー』*2の一ノ瀬次郎役にも反映されており、シリアスなプロットの中に清涼剤的に作用している。
また、グループではセンターを務めており、曲あたまを歌うことが多くドラマや映画の主演も多い。また、「MEDAL RUSH」などを見ている限り、運動神経も素晴らしいようだが、たとえグループで一番「できた」としても例のニコニコ顔でいるため、嫌味がない。「Johnny's World Happy LIVE with YOU」でもとびっきりはじけて、とびっきり笑って楽しそうな姿も見られた。
いままでのセンター的存在のような「華」を持ちながらも、下手に飾り気のない感じはグループ全員に共通しており、それを象徴しているのが平野なのだろう。
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ちなみに、このギャップは曲にも反映されている。デビュー曲「シンデレラガール」、2nd「memorial」、3rd「君を待ってる」のように“王子様”を連想させる曲から、ファーストアルバムのリードトラックとなった「Naughty Girl」や最新シングル「Mazy Night」のような大人でハードなナンバーまでデビューからたった二年で相当の幅を見せている。このような「ギャップ」は、ふわふわしていても決めるとき決めるという生涯現役をも見えた「令和人」にとっては「希望」の形態をとっているのだろう。
インパクトの強いデビュー曲「シンデレラガール」は、印象以上にダンスの難易度、曲の難易度ともに高い。一番と二番が違うというアシンメトリー的構造であるのとテンポが速いことが関係しているのだろう(ぜひフル尺で聞いていただきたい)。
ちなみに、アシンメトリー的なのは、6人でいるときにより増すのは、ファーストコンサートのDVD「King & Prince First Concert Tour 2018」をみると一目瞭然だった。現在は病気療養中の岩橋玄樹くん(以下、敬称略。)の個性は、個性豊かなメンバーの中でも抜きんでていて、いい意味でバランスを崩してくれる。やはりKing&Princeは6人であるのだなと感じた。いつか、未来にリアルタイムで見てみたい、それが素直な願いだが、無理をしないでゆっくりしていただきたい。
YouTubeにみるKing&Princeの「強さ」
コロナ禍のなかで、YouTubeという媒体でもKing&Princeをみることができた。「Smile Up ! Project」関係でのコンサート(先述)、「〜リモート de ゲーム〜」、「〜リモート de チャレンジ&エール〜」、「Mazy Night」のMVが主たるものとして公開された。
ここでは、「〜リモート de ゲーム〜」、「〜リモート de チャレンジ&エール〜」の二つについて取り上げたい。はじめに、5月4日に公開された「〜リモート de ゲーム〜」を見てみよう。
冒頭から、平野がはじまっていることに気が付かないなど、いわゆる天然で“グダグダ”な雰囲気がただよう。「シンデレラガール“happy‼︎”最後に言えた人が勝ちゲーム」というゲームは、概要欄に以下のように説明されている。
〈ゲーム内容、ルール〉
①シンデレラガールの頭サビを順番に歌う。
②英単語の歌詞は1単語〜3単語まで歌って良い。
例:「キミはシンデレラ / ガール」であれば2単語
③日本語の歌詞はそのまま、1単語〜3単語に含まれない。
④歌詞を間違えたらアウト。
⑥最後の「happy‼︎」を歌えた人がhappy boy!
その後の展開も予想不可能だ。最初は、高橋が「Only」を「On」で区切ってしまったため、OUTになるも、「グダって」しまったため、永瀬がジャッジ権限で高橋を復帰させる。その後、岸が歌詞を間違えてOUT。神宮寺勇太くん(以下、敬称略)は日本語歌詞をうたっていた際に、平野がカットインしてきてセッションになっていたため、理不尽にもOUTに。このときの神宮寺の一見冷静そうでクールなビジュアルから想像つかない不遇さへのリアクションが面白い。最後は、神宮寺から日本語歌詞を受け継いだはずの平野が、歌詞を間違いOUT。結果、最初にOUTになったはずの高橋がhappy boyとなる。
こんな展開は、ふつうなかなか見られない。天然のひしめくなかだからこそ生まれるKing&Prince的な“グダグダ”展開だろう。しかし、なぞの中毒性もある。何回も見てしまう要因があるとすれば、彼らがあくまでも真剣にやった結果のため“グダグダ”も予想外の結果を呼び、肯定的に反転する可能性をもつからであり(最後のふりきった高橋のhappy boyがその証左といえるかもしれない)、圧倒的に「華」があるからだ。YouTuberにはないシンプルな構成に、シンプルなゲームで動画が成立してしまう。
当該動画からは、彼らの大きな「強さ」を感じる。キャラクター性の「強さ」と「華」の強さ。King&Princeには、彼らにしか導き出せない予想不可能なストーリーがあり、それを許されるくらいの「華」がある。それはいままでにはなかった「バラエティ的なものの形」があり、その新鮮さはいつか「令和」的なものへ導き出される可能性を感じた。
一方で、「〜リモート de チャレンジ&エール〜」のほうでは、トム・ホランドよりもピチピチのTシャツを逆立ちで着るチャレンジを岸が行うというものだった。
ここでも、予想もしない展開がある。ぴちぴちTシャツを着た岸の谷間を高橋が指摘し、みんなで爆笑するなどという中学生男子のような「かわいらしい」展開があるからだ。その後、必死で頑張る岸を見てゆるーく応援する平野・神宮寺・高橋。見守る永瀬。ぴちぴちすぎて苦戦するも首を通せたところで岸が完了したとしようとすると、他のメンバーは先ほどとうって変わって厳しい指摘を見せ物言いがつく。二度目はうまくいかないが、ここでも厳しい指摘が飛んでいた。ここでみられたのは、さきほどみた「関係性の妙」。ゆるーくみえながら、厳しいところは厳しい。彼らの絶妙な緩急が面白かった。YouTubeという新しい媒体の中でもKing&Princeは輝いていたと思う。
King&Princeから考える「アイドル」
アイドルとは「未熟」だとよくいわれる。例えば、カキンオクサナは、「ジャニーズ事務所所属アイドルをめぐるファンの実践の検討から」アイドルと「未熟さ」の関係について、以下のようにまとめている*3。
アイドル・ファンはアイドルの成長の応援に関わる積極的な参加者であり、アイドルの「未熟さ」を測定し、評価し、承認し、育成し、母目線で愛でること、そして「成熟」したアイドルから「降りる」ことというファンの一連の行為がアイドルの「未熟さ」を磨き、愛でる日本のファン文化実践の核を構成している。
確かに、アイドルと「未熟さ」は近似した地点にあるのは否めないだろう。King&Princeにしても、デビューが2018年であり、平均年齢は20代前半なのだから、当たり前のごとく「未熟さ」をはらんでいるし、メンバーの体調不良のため不本意ながら、6人がそろっていた時期が少ないということもあった。さらに、より俯瞰的にみれば様々な情報や生きていくための技能が大量に存在する発生してくる現代社会では、もはや多くの人間にとって「成熟」自体が難しいのではないだろうか。
もう少し考えていきたい。私の様に、アイドルに詳しくない人間でも「エネルギー」(「パワー」)を感じるいわゆる「キラキラ」さは、なんだろう。それは、前述したようにKing&Princeが、無意識的に、あるいは運命的に選ばれている「時代」との関連性が関係しているのではないか。思えば、かつてジュリーという愛称で広くアイドル的人気を誇った沢田研二はどちらかといえば、「成熟」していたと思う。SMAPや嵐も長年「アイドル」あるいはスターとしての地位を保ち続け、その間ずっと「未熟」だったとは思えない。アイドルをよく見れば、「未熟」さが必要条件ではないことが見えてくる。
アイドルは時代をつかみ、時代に愛され、時に時代を作る存在ともいえる。アイドルの―それも特に「アイドル知らない勢」にも強くその存在を意識させる―「アイドル」は、「未熟」さよりも「その時代」に近似値をとるともいえないだろうか。
おもえば、King&Princeは、平成初期から平成末期までアイドルとして駆け抜けたSMAP(デビュー:1991年、解散:2016年)が解散した直後、平成の終わりにデビューし(2018年)、2000年代を代表するアイドルの嵐(デビュー:1999年、活動休止:2020年末予定)が令和の初めに活動休止を宣言した段階で二年目を迎えたというグループという運命性もある。
King&Princeは、すでに「時代」に近似値をとっている。これから、どんなグループになるのだろうか。「国民的」か「世界的」か、はたまたKing&Princeがそのものジャンルになるような想像もつかないような…。6人の未来は、日本のポップカルチャーに影響していくように感じる。