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東海オンエアの主砲は、マッドな哲学者~しばゆー論【東海オンエア個人論第二弾】#前編

 

 「東海オンエア」のみなさまの個人論(魅力を分析する趣旨)、第二弾はしばゆーさんです。

 

【第一弾:てつやさん編↓↓】 caaatteey-0815.hatenablog.com

 

 「東海の主砲」としても、知られるしばゆーさんは、東海オンエアの初期から支えてきたメンバーです。きつい企画や罰ゲームをクレイジーともいえる動画根性で乗り切る東海オンエアの中でも、特にクレイジーな発想で動画を盛り上げている「ボケ」のなかの中核メンバーとなります。ボケや動画作成(編集)、企画、リリックなどすべてに通底する「独特さ」は、「知性×非常識」のバランスから生まれていると思い「マッドな哲学者」というタイトルをつけさせていただきました。

 

「東海オンエア」個人魅力分析論、第2弾として、しばゆーさんについて書いていきたいと思います。

 

 

【【※以下、ネタバレ・にわか・略敬称注意でございます※】】

 

 

 

0.東海の主砲「しばゆー」とは

 本名、柴田裕輔。メンバーカラーは黄色。2013年の初期から、てつやとともに動画の登場頻度が多く、知名度の高いメンバーである。高校は、てつやらと同じ岡崎城西高校だったが、てつやらの陸上部でなく生物科学部に所属していた。大学は、建築学科にいたが、中退している。2016年にはかねてから交際し、ともにカップルチャンネル(「しばなんちゃんねる」)をしていたあやなんと入籍、現在一児の父(第二子誕生予定)。以降は、東京と岡崎を行き来する生活を送っていたが、2018年ごろ自身のスキャンダルで東海オンエアから一時脱退の危機を迎えた。その後、和解し再び中核メンバーとして活躍している。また、2020年三月には突如として「ニンマリシティへようこそ」という個人チャンネルをはじめ、そのシュールな内容が話題を呼んだ。

 

 

 

1.ワードセンスの多様性と不適合の「適合」

「お勉強」ができる男

 しばゆーのおもしろさの根底にあるのはその知性だろう。しばゆーは、東海オンエアの中では以前に過去に教師をしていた虫眼鏡に次いで「お勉強」ができるメンバーとして知られている。「東海オンエアで一番賢いのは誰だ!?抜き打ち学力テスト!!」*1では、司会・採点の虫眼鏡を除いたメンバーのなかで一位(ゆめまるが同率一位)をとっているし、「【カンニング意味ない説】カンニングし放題vs頭いい奴 センター試験対決!」*2でも、(司会が虫眼鏡だったため)カンニングをしないメンバーとして登場し、時間内で終わったメンバーの中では一番の成績をとっている(ブランクありで45点は高いと思う)。また、同動画では現役時には、センター「ガチ勢」であったことが語られている。マソップ25では優勝してるしね*3

 

 つまり、ここで言いたかったのはしばゆーの発想の源流が「お勉強」的な知性にあるということだ。それがぶっ飛んで見えるのは、そこに天性のリズム感と「ズレ」のタイミングの良さなのだ。その点について以下で確認していこう。

 

 

 

キャッチー過ぎるリズム感:「癖」が強く「癖」になる

 しばゆーのリズム感は異常だ。キャッチーで癖になり、ときたま頭に浮かんで動画を再視聴したくなるような…。そんな「リズム感」をリスナーに提供しつづけてきた。

 

 例えば、伝説の名作「すべロウ」*4。ふすまの滑りをよくする「すべロウ」という商品を割り当てられたしばゆーは、なぜかマントを着た姿で「Oh my god!!! I can’t understand Japanese Husuma!」(神よ!日本のふすまが理解できない)となぜか英語を叫び、倒れたところにスベロウを発見。「家のふすますべすべさ~」といういかにもCMにありそうな非常にキャッチーな音楽と歌詞が流れ、はげしくすべロウをつかうしばゆーの映像が流れる、そして、「It’s better than nothing」(無いよりましさ)という名言が入る。

 フォーマットはCMそのものでテンポの良さとメロディの覚えやすさがあるが、なぜか英語でのセリフ、おそらくテンポだけで選ばれたがために、似つかわしくない位置で登場した「It’s better than nothing」。すべてが、意味が分からないけどリズム感が良すぎて頭に残ってしまう。「It’s better than nothing」に至っては、絶妙なワードチョイスに映画上記した「お勉強ができる」感じを感じてしまう。

 

 また、このようなリズム感の良さを発揮するのが、ラップをしているときだ。記憶に新しいのは二つ。「【悪ふざけ】寺田心ブックオフのCMを超絶編集してみた!!!」、「【来日】シバネムさんの高速ラップ聞き取りクイズ!【負けたらパーカー】」の二つだ。

 

 

 

 前者は、ラップまでの導入までの音楽と映像のグルーヴが素晴らしいうえに、ラップが導入され、「BOOKOFF」「BIG BOSS」「TAKE OFF」「コーンロウ」「マックブック」と韻を踏まれながら意味の分からない言葉がならべられながら、自由にかつ制限ありで展開していくのがおもしろい。意味がないようで、ある。関係ないようで、ある。というバランス感覚は、もはや彼のリズム感のみが支えている。 異常によいリズム感による関係にならざるものへの紐帯は不思議と心地よく、笑いが生まれてくるのだ。

 

 後者の動画の最終問題はてつやが「ゾクゾクっと来るものがある」というくらいリリックのスピード感とリズム感すごい。もはや、何語なのかもわからない五感である。しかしながら、ここでもこのリズム感のなかに「寝具臭い」「シモヘイヘイ」「栗山千明」など遊び心のあるワードと、「閉経」「祭壇」というようなダークなワードが散りばめられている。連鎖性の確保の不能このリズム感だけの無茶苦茶抱き合わせが、なぜか壮大に感じられるところが怖い。リズム感だけが紐帯の連鎖性不能ワードとそこからうまれる「世界観」の形成は、「癖」が強く、「癖」になるしばゆーの面白さの中核を担っているのではないだろうか。*5

 

 

 このような、リズム感は編集にもみられる。最近でいうと「【事件発生】りょうのヤバい絵を読み解き、紙芝居を完成させよう!」*6という動画のアクシデント時にみられた(「編集 しばねむ」という表記が概要欄にあり)。これは、メンバー一の絵の個性的に下手なりょうが作った紙芝居の内容を読み解けるのかという検証動画だったのだが、出題者側の虫眼鏡が、かなり先の展開を途中で回答者側にみせてしまうというアクシデントが起こる。東海オンエアでは「予定外のネタバレを指す用語」として「熊」という言葉をつかうのだが、まさしくその「熊」が出てしまったというわけだ。その際、回答者勢(てつや、ゆめまる、としみつ、しばゆー)は「大熊大臣」というノリをみせるわけだが、この(応研株式会社のCM「大蔵大臣」をパロディしたような)「大熊大臣」のリズムとそれっぽい音楽に合わせてクマの映像を挿入し、果てはクマだけが、残像のように残るように編集している。この遊び心ある編集も、言葉とリズムとノリの紐帯を視覚化するという彼のリズムの良さの現れではないかと思われる。

 

 リズム感により、おそらく「お勉強」の素地のもと湧き出る多様な発想が、“意味があるようでない”やり方でつなげられていくというのはまさに「不適合」の「適合」であり、その予知できない「ハマり方」に多くのリスナーは「笑い」ころげてしまうのではないだろうか。

 

 

知性を感じる発想の多様性と不適合が呼ぶ文字列と「笑い」

 しばゆーは、動画内のことばのセンスも面白い。どこからその発想が来たのか?というほどの多様な形容が不適合な位置に置かれていることもしばしばだ。例えば、「【ムシえもんもいるよ】仲間の心を読め!相談なしで4人の衣装を揃えるゲーム!」*7では、スネ夫かぶりをした(東海オンエアの準レギュラー、「プロラグビー選手」こと増田)に対し、「ゴルフ場のブサイクなキャディーだ」というなぞのツッコミをしている。増田のスネ夫姿は確かに面白かったが、ツッコミがニッチ(位置が不適合)で謎であり、もはやボケになってしまっているというパターンだ。

 

 また、「【レペゼンサザエさん】第一回!次回予告作り選手権!!!!」*8では、なぜか次々回分までつくっているのだが、そのラストに出るタイトルがなぜかサザエさん風(ナレーションでも「来週のサザエさんは~?」といってしまっている)になっており、「波平、ボタン電池を誤飲」、「タラちゃん、FXで失敗」、「血の都、幕府の陶酔」という副題らしきものが並ぶ。東海オンエアと全く関係ない文字列。波平と誤飲の「ブラック」さ、タラちゃんとFXの「ブラック」さと「ミスマッチ」、もはやどこに関係しているのかもわからないけどおどろおどろしい、「血の都、幕府の陶酔」。ワードセンスの発想は多様で知識的だが、不適合な位置に落とし込められることによって、それはおおボケ(爆発的な「笑い」への導火線)となる。

 

 

 なかでも、それが文字(発言)だけではなく、動画そのものへ昇格したものが、「【真理】哲学という学問が意味不明すぎるのでソクラテス先生に聞いてみよう!」だ。

 

 

 しばゆーは「ソクラテス先生」を演じている。この「ソクラテス先生」の語尾、「~であろう」という推量形は、「哲学者」がたびたび結論を収斂させない思考過程の重視の学問であるという運動性そのものを「断言」しないことで表しているという高度な体現なのだろう。だから、「正解などない」「クイズですらたぶんない」、「この動画の存在自体が哲学」というのも、ボケでありながらいかにも哲学的であるという面白さがある。

 ここで飛び出した名言がソクラテスの偉業「無知の知」(知らないということを知ることが真理への第一歩であるということ)をもじった「無知のち晴れ★どーもソクラテスです」だ。知性的な振る舞い、発言をボケに昇華しつつノリがチープなこの発言は、まさにしばゆー的な多様性×不適合から来る文字列(としかいいようのないもの)が、破壊的な「笑い」を呼んでいる。結果、笑いのツボへ「適合」してしまうのだ。

 

 

 

2.「枠」を遥かに超えていく存在として

 ものを製作する動画やなにかを検証する動画においてトリに選ばれたり、無茶ぶり企画の“被験者”となったりすることの多いしばゆー。それは、彼の「枠」に収まりきらず、そこからはるかにはみ出していく存在だからともいえる。ここでは、いくつかの例を挙げてみてみよう。

 

“ファッショニスタ”

 「おしゃれ」とは哲学並みにむずかしいわけだが、普段からもはや「おしゃれ/おしゃれではない」という概念を崩すような「攻め」のファッションをしているしばゆー。「おしゃれ」、「服」、「ファッション」という概念そのものに収まらない服を(罰ゲーム外でも)来ていることが多い。

 

 「【簡単で難しい】しばゆー今日何着てくるでしょうクイズ!!!」の冒頭では、「(いろんな意味で)しばゆーのファッションセンスはとにかくずば抜けています」、「ファッションショー的なオーラすら感じます」と説明されている。

 

 

 たしかに、視聴側からみても、しばゆーの服はもはや「アイコン」的というほどわかりやすく(同じようなもの、黄色が入った派手なものを着がちという意味)、理解しがたい(明らかに普通ではないのに、見慣れてくるとオシャレに感じる。あるいはキャラにあっていると感じてしまうという意味)。自分の履いてきた靴をしばゆー自身が「芽キャベツみたいな」と客観的に見えるように形容するのもおもしろい。

 企画を意識した三日目には、ゴーグルに彦根城の笠に子供用と思われる傘をもち、さらに昔企画で作ったレザーのベストを着るという「オシャレかどうか」や「面白いかどうか」という問いが無効化されたファッションをしていた。まさに「枠」を飛び越えたぶっ飛び方といえよう。(ちなみに、比較的派手なてつやの服を着たしばゆーはとても地味に見えた。)

 

 そういったファッションでの「枠」の超え方は、「【散財】ハイブランド服屋さんで一番攻めた格好を買って来た奴が優勝!!!!!!」でも見られた。ただでさえ、攻めているしばゆーが「攻め」の服を着ると、(ゆめまるの言を借りれば)「全裸」になってしまうところなど、もはやどんなファッショニスタもかなわないほどぶっ飛んでいるのではないだろうか。想像を上回る「枠」にとらわれないぶっ飛び方は、やはり爆発力のある「笑い」につながっている。

 

 

 

 

料理と実験、ものづくりの概念とは…

 ファッションと同じように、料理についても「枠」を破壊していく。「クイズ!本物のしばゆーの料理を見破れ!!」では、「個性」が出るといわれており、過去のダークマターたちがフラッシュ的に出演している。

 

 

 しばゆーは、まるで科学実験のように料理を行うためか、「まずい」ものを量産してしまう。上記の動画の二問目の餃子では、表は羽根つき餃子なのだが、うらはししゃも・チーズというひき肉すらないもはや皮の部分しか餃子要素がない(虫眼鏡の言を借りれば)「正気の沙汰」ではないものをつくっている。しかも、当てられた本人の感想は、「かっこいいやん」なので、動機も(笑いを優先したのか、本気でこうなるのか)絶妙にわからない。どちらにしても多くの人の餃子という固定概念は破壊されるような発想だろう。

 

 

 

ルール破りと盗っ人

 以上のような一種の「枠」破壊は、ルールや法則への破壊することにも通底している。例えば、「【大流行】PPAPをシバ太郎が改変してクイズにしてみた!!」では、「PPAP」(=ペンパイナッポーアッポーペン)という法則を破壊しているために、問題が非常に難しくなっている。ちなみに、一問目は、枝豆+鉄板焼き=もんじゃずんだビンタどんなもんじゃである。一応、理論としては枝豆が粉砕され、“ずんだ”に鉄板焼きは“もんじゃ焼き”、ビンタのモーションがあるので“ビンタどんなもんじゃ”という型破りなもので、例題なしでこれを導くのは不可能に近い。発想がどこからきたのかすら、探すことが難しいためもはや理解の範疇を超えてしまい笑いにつながっている。ちなみに、リズム重視なのは、前項の分析を証拠付けいる部分といえるかもしれない。

 

 

 

 また、この「破壊」は、回答者側になっても起こる。DA PUMPの『U.S.A.』の「カーモンベイビー○○」のあとに「○○」のあるあるをいうというゲームを行った「【カモンベイビーアメリカ】踊りながらするU.S.A.ゲームが楽しすぎた!!!!」という動画での回答も、破壊的だ。

 

 

 お題「アメリカ」に関しては、「猫の主食もハンバーガー」、「おばあちゃん」に対しては「おはぎの中に干し柿、「サッカー」は「腰からさげたお寿司」とこちらも「あるある」の概念の破壊が見られる。どこからその発想が来るかわからないけど、絶妙なズレを含んだワードセンスがキャッチーで癖になり、「笑い」につながっていく。

 

 

 また、しばゆーは善悪や所有の概念も破壊的であいまいなようだ。おそらく、しばゆーの概念は、しばゆーの中にしかないのだ。まず、しばゆーは基本的に「優しい」。悪口や愚痴を動画内でいっている回数もかなり少ないのではないだろうか。動画内でもメンバーのりょうが「鈍感なところはあるけど気が付いたらちゃんとやれる奴」*9というほどである。キレてもいいようなところでも、まず受け入れようとするところは、リーダーてつやと似ている部分があるように感じる。

 しかしながら、負の側面でも善悪の概念、所有の概念はかなり怪しい。「【泥棒】しばゆーがすぐ物を盗むので現行犯で逮捕します。」

 

 

 おそらくしばゆーの所有の概念は、最初にメンバーが分析している感じに似ているのだろう。「俺のもの/お前のもの」が非常にあいまいで悪気がない。「わからない」とのことらしい。一般的にはもちろんアウトだし(動画内でも言及があるように絶対に肯定されるべきものではない)、ある意味怖いが、なぜか不謹慎ながら笑えてしまう。しばゆーは、あらゆる概念が「しばゆー流」であり、それが概念破壊的なので怒りなどあらゆる感情を昇華して「笑い」にかえてしまうのだろう。

 

【後編:“無思想性の思想”につづく…】

 

caaatteey-0815.hatenablog.com

 

 

 

 

*1:https://www.youtube.com/watch?v=AGNhj2tJW2

*2:https://www.youtube.com/watch?v=DFJVPRZOWPA

*3:

*4:第一回誰が一番売れそうなCM作れるか選手権!!より↓↓

*5:だからこそ、しばゆーのリズム感は「しばゆー」本人を隠すことができず、「欅坂46のダンスって素人が考えても見分けつかないんじゃね?」や、「西野カナの歌詞って素人が考えても区別つかないんじゃね?」では楽勝で見分けられてしまうのだろう

*6:

*7:

*8:

*9:「【後編】仲間と協力して「自分のいいところ」を当てよう!」より