猫にもなれば虎にもなる。

院生による本格分析(をめざす)ブログ。ねこちゃんにも寅くんにもなれるような柔軟な姿勢。

【メモ】リモートは“エンタメ”を変えるのか?【テレビ、YouTube…の未来】

 

 コロナの影響は、一人の人間の想像力を遥かに超えていく。その変化は、「大きな視点」でも「小さな視点」でも、感じられる。

 

 現在、経験したことなないような状況のなかでも様々な工夫でエンタメが「日常」的に届けられている現状は非常に有難いと思う。おそらく多くの人が自らの恒常性を保つためのエネルギーになっているのではないだろうか。

 

 その工夫の中の一つが、「リモート」によるエンタメの提供だ。テレビでいえば、情報番組、バラエティ番組やクイズ番組でよく見るようになった。画面の中に画面があるという不思議。矩形の中の矩形。発信元から受信先のラグの連鎖。見慣れないためにはじめは、負の部分や違和感が先行した。画面の中の人物が画面の枠に制限されているようで不自由にも見えた。

 

 

 しかしながら、見慣れてくると“「リモート」とエンタメの正の側面”が徐々に見えてきた。まず、「リモート」の場合、(ラグなどの関係で)人数が限られ、「ひとりひとり」が割とはっきりと見えること。

 

 近年のバラティでは、いわゆるひな壇形式が採用されてきた。ひな壇形式は人数がたくさんいることで、「華やかさ」や手数の多さを演出でき、“テレビらしさ”を表現するのにはうってつけだった。しかしながら、今回「リモート」に挑戦したことで、「人数制限」がかけられ、従来のバラエティ等も必ずしも人数を増やさなくても、出演者ひとりひとりをよりクローズアップし、視聴者に注目させ、緊張と集中のなかで「笑い」を生み出せるということの再発見ができたのではなかろうか。

 

 逆に言えば、「ひな壇方式」の負の側面も見えたといえるのかもしれない。人数をかけているために、出演者側は自分の発言や行動などが採用されるか(そもそも発言できるのか)の「不安」を抱えており、見る側は無意識にも出演者に対して注意が散漫になってしまっていたのではないか。将来的に長らくみられたこの形式が大きく転換するか、あるいは、大型にアップデートされているかもしれない。

 

 素朴なもののよさは、『CDTV』において見られた「おうちライブ」企画によっても再認できた気がする。秦基博は自身の名曲「ひまわりの約束」を弾き語りで歌っていたのだが、素朴なギター一本と彼自身の声という構成、カメラが定点であるという情報的制約があるからこそ、その一音一音が非常に際立ち、改めてこの曲の「よさ」、彼の声とギターの音の粒の心地よさを感じることができた。スマホの普及により非常に情報量の多い生活をしている現代人にとってこの「素朴」さは「癒し」につながるのかもしれない。あえて、情報量を抑えることで「癒し」の効果をもつものは需要があるということも今後の可能性につながるのかもしれない。

 

 

 

 テレビ画面のなかのリモート画面はその性質上、画質が荒いこともあり、YouTubeユーザーならばその画面がYouTubeっぽくなったと感じた人もいるかもしれない。テレビが若干リモートにより、YouTube的画面になるとYouTubeはどうなるのだろうか。YouTubeは、基本的に非常に少人数で完結することも多く、またゲーム実況などの分野では一人で…ということも大いにありえるため、ほとんど通常運転のユーチューバーが多い。

 

 ただ、いつもはYouTubeに登場しないような第一線のアイドルらが、リモートで共演し視聴回数や急上昇に乗っている現状を考えれば、YouTubeで行われている企画もより工夫が求められる可能性もある。しかしながら、YouTubeが大型の変化をなされることはないのではないだろうか。それはYouTubeスマホやパソコンという小さめの画面で見られることが多く、その仕様に合わせて画面構成や企画構成が日々増えていく投稿者によって工夫されていくため、革新よりもちいさな発見がこれかも見られていくのではないだろうか。

 

  逆に映画は、高画質で映画館という空間のもつ特殊性(暗さ、集中性、音響の立体…)があるので、「リモート」によって大きく変化することはないと思われる。現在、新作がオンラインで公開されているが、それは緊急事態への対策であり、もし今後も公開されるものがあるとすれば、地方ではなかなか見られなかった「単館系」を見られる対策として行われるのではないだろうか。

 

 

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 よって、リモートはエンタメの中でも「テレビ」を大きく変えるのではないだろうか。何年か若干凝り固まっていた部分が、変化していくきっかけになるかもしれない。テレビ的にリモートをより工夫し、考えもつかないような新たなものが見えていく可能性もある。そんな未来を予想しながら、今日も過ごしていこう。